高次脳機能障害-当事者の著書を読む
- 北北高次脳普及支援
- 2021年5月9日
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関 啓子 「話せない」と言えるまで 言語聴覚士を襲った高次脳機能障害(医学書院)

本書は、一般の方が初めて高次脳機能障害を体験して書かれた手記ではありません。
脳梗塞を発症し、高次脳機能障害を自ら体験したのは、現役の言語聴覚士であり、且つ高次脳機能障害のリハビリテーションを専門分野に持つ気鋭の研究者でもありました。著者の関啓子氏は、そのような専門家としての自分が体験した、脳梗塞発症から急性期・回復期・復職準備~復職、そして現在までの道程を丁寧に振り返り解説しています。
興味深いのは、自らの障害を分析したり、評価に際して考察するときは非常に客観的なプロの視点を感じる一方で、一人の患者としての障害の受け止め方や、医療者への思い、そして職場や家族への気持ちについては主観的で正直な感情に溢れていることで、リハ医療に携わる者としてとても他人事とは思えず、読みながらぐんぐん引き込まれてしまいました。そしてまた、著者も述べているように自らの医療者としての姿勢を反省するよい機会にもなりました。
読者の専門分野によっては難解な部分もあり、治療経過や訓練方法についてもすべての方に当てはまる内容ばかりではありませんが、高次脳機能障害を持った方を支援する立場の人にこそ読んでみてほしい貴重な本だと思い、紹介させていただきました。
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